夏目友人帐
我从很小的时候开始就可以看到一些别人看不到的东西,哪些被人们称作妖怪的东西。我是一个会盯着空气看,和空气对话,朝空气大喊,甚至会对空气动武的令人不快的大骗子。对于这种与生俱来的能力,我实在喜欢不起来。
说起来,玲子奶奶也拥有这种能力,但她却并没有像我那样害怕与妖怪打交道。不如说,正相反,玲子奶奶到处挑战各路妖怪。败者就将自己的名字写在一张纸上,收进奶奶的有人帐里。拜它所赐,我现在每日都奔波于有人帐的归还和逃避盯上有人帐的妖怪们的袭击之类的事宜中!或许没有友人帐这种能看见妖怪的能力,我就能像普通人一样地生活,会比现在幸福得多吧!雨夜总是容易让人伤感。
夏目看着桌上静躺着的友人帐感叹万千。这么想已经不止一两次,这次却尤为强烈,是秋雨的关系么?深秋的凉意从窗户的缝隙中渗了进来,夏目不禁朝窗边望去,叹了口气道:“还没回吗,喵咪老师。算了,去接它。”说完,披上外套,向塔子婶婶打了个招呼便向外走。
“等一下,高志,把这个带上”塔子婶婶的语气永远那么温柔。夏目答应着接过了塔子婶婶递来的伞:“我出门了。”“路上小心!”
夏目撑开了伞没走几步便听到附近草丛中的窸窣声,“喵咪??,老师?”草丛中传来一声微弱地一身“喵”。“怎么回事,好像不是喵咪老师?”夏目疑惑地拨开了草丛——一只小猫正在里面瑟瑟发抖。不对,这只不是普通的猫,夏目在它的身上感觉到了妖怪的气息。远处喵咪老师醉醺醺地回来了,“呆子,不来接我在这里干什么?啊啾!要是这样子感冒了全是你害的!”喵咪老师一边打着喷嚏一边抱怨。“啊,老师你回来了。”夏目轻描淡写说完便抱起小猫往回走。后面的斑无语地喊着:“等等我,你这个薄情的家伙!”
家中真的很温暖,都被雨淋成了那样,这个小家伙却还能这么安稳地睡着。
这天晚上,小家伙的记忆流进了夏目的梦里。
同样是雨夜,小家伙被雨淋得无处可逃只能钻进附近的草丛里。可是寒冷的夜雨依旧不停地打在它的身上,冻得它“喵喵”地叫个不停。
旁边人家的灯亮了起来,接着大门被打开了,从大门里走出来了一个瘦弱的女孩。女孩撑着伞寻找雨中的声音,很快她便发现了那只小猫。小猫听到了外面的动静弓起了身子,加强了警觉,看到女孩靠近很凶地喵了一声。女孩没有丝毫害怕后退之意,将伞倾向小家伙的那一边另一只手轻轻地抚摸着它的头:“好孩子,回家吧!”
小家伙愣住了,出生以后就不知父母去哪的它一直是孤零零的,到处漂泊,走到哪里受到的都只是欺负和嫌弃。没想到这样的它,有一天也会有人对它说回家。小猫觉得身上暖暖的,心里也暖暖的。
“幸福大概就是这种感觉吧!椿是那个女孩的名字,能每天躲在椿的书包里和她一起上学,一起吃饭,一起散步,一起睡觉真是最美好不过了的。不过女孩的身体不适很好,一个星期至少要去医院两次。不过没关系,我会守护它的。”这是小家伙在那段时光里的最真切的想法。
忽然有一天夜里,小猫察觉到了一种不祥的气息。经过一阵骚乱后,气息消失了。女孩的家人闻声而来时,家里已经一片狼藉,在场只有小猫。
愤怒的家人将小猫扔到了门外。
“不是,不是你们想象的那个样子,我没有??”小猫用力地争辩可是没有人听得懂。 “我给椿添麻烦了吗?那个温暖的地方,我再也回不去了吗?好冷啊??椿、椿??”小猫就这么失落地擅自想着,身体却被一双温暖的收抱了起来:“刚才的事,我全部都看到了,小猫,你真是我们家的福神!说起来好像还没有帮你取名字吧?嗯??呃??福、福丸,怎么样?”
“福丸,我的名字吗?”
“啊,说话了!”看着被自己惊叫吓到的福丸,椿笑了笑,“开玩笑的,其实我早就知道你不是一只普通的猫。好像我从小就能看到,听到一些特别的东西,家里的人都觉得我有说谎癖。不过福丸可以理解我的吧!还好遇到了福丸,我不是一个人了!”
“还好遇到了福丸,我不是一个人了!”仿佛所有的幸福都凝聚在了这句话上。
“夏目,呆子,快起来!看着周围!”喵咪老师一如既往焦躁地在夏目的杯子上跳来跳去。“怎么啦?”被喵咪老师吵醒的夏目懒懒地应付了下,随即睁开了双眼,吃了一惊。家里一片糟乱,正如梦境里的一样。
“老师,昨天到底发生了什么?”
“昨天,那个,不是说酒精会麻痹大脑吗?也就是说??”
“睡死了??”
“呆子,像你这种小鬼怎么会知道大人的烦恼?不过话说回来,那只神经紧绷的猫怎么看到很可疑,不会是它干的吧?”
“它?啊,对了!谢谢你,福丸。是你帮了我们对吧?”
“夏目,你是不是傻掉了?”斑抱怨着。
二人无视掉斑的抱怨,福丸激动地跳到夏目的胸前,抓着他的领口质问他:“你怎么知道’福丸’这个名字?椿跟你说的吧?你认识那个女人,她在哪?快说!”
“福丸,你很喜欢椿小姐吧!”
无视掉旁边一直发着牢骚的斑,二人继续着他们的对话。
“闭嘴!那个女人,那个背叛了我的女人,那个把我骗得团团转的女人,下次见到她,一定要她好好体会体会什么叫怨,什么叫复仇!”
“发生了什么吗,你和椿小姐之间???”
“我是那么信赖她、依赖她,她却把我丢弃到她的朋友家,还告诉我哦一定会来接我!我等了那么久,那么久,为什么没来?我都被你的朋友的家人给驱逐了,为什么还不来?”看着福丸那么悲伤愤怒的脸,夏目不知道该说什么了,他也不知道事情怎么会变成这个样子的,昨晚的梦明明那么温馨,梦里的椿小姐明明那么温柔,问什么会变成这样?
这一夜,福丸的记忆,福丸的心情继续涌入了夏目的梦中。
“福丸,对不起,先让你在这里寄住几天,这里是我最好的朋友家,要好好相处哦!”椿小姐好像更瘦了,还更虚弱了。
福丸好像并不想老老实实地呆在这里,所以在椿要离开的时候,它也悄悄地跟在后面。 “不行哟!福丸,我是真的有重要的事情要做,所以听话!”
“不能带着我吗?”
“不能。”看着福丸失落的脸,椿拼命地从脸上挤出一些微笑,“放心,一定会来接你的!” 听到这句话,福丸才放心地回到椿朋友的家里。
“椿不在的时候,就跟她的朋友好好相处吧!名字什么来着?哦,友子,真是个有趣的名字。”
可是事情远远没有想象中顺利,友子的家里也进了一只有邪气的妖怪。
结果可想而知。福丸被友子的家人拿着扫把赶出了家门。
“好心没好报!嘛,算了,这样一来椿就会来接我了。”福丸满心欢喜地在你友子家的门外等待着,等着椿来接它。一天过去了,椿没有来。
“没事的,椿一定会来的,因为约好了嘛!”福丸就这会相信着等了一个星期,椿还是没有来。
这天晚上下了好大的雨,福丸又钻进了附近的一片草丛里。
“和那天一样,好冷,不过这样椿就会来了吧!”
雨继续下着,夜越来越黑,福丸的身体越来越冷。
“没事的,椿会来的,一定会来的!我,完全不冷!”
最终,雨持续了一夜,椿还是没有来。
“椿,为什么?”福丸再也待不住了,它要自己去见椿。
福丸顺着自己熟悉的味道最终找到了椿的家。
“只要在这里等,椿就会出现吧!”
一天, 两天,三天??
“椿,你去哪儿了?是不是我没有尽好福神的职责,所以才会消失?”
从这以后,福丸每每盯上有邪物入侵的人家,帮助他们驱走邪物,而最后总是受到别人的 驱赶。
“没事的,这样椿就会来接我了!”
日复一日,椿终究还是没有来。
“好恨啊,椿!为什么不来?为什么不来?为什么骗我?”
清晨的阳光刺得眼睛好痛,夏目背过光去,眼中却仍然闪烁着。
“对不起,请问有人吗?”楼下有一个女高中生模样的人在询问。塔子婶婶出去了,于是夏目立即收拾了几下就下楼了。
“请问有事吗?”
“听说这附近有一只特别爱捣蛋的猫,请问你有没有见过?”夏目总觉得这个人在哪里见过,听过这番话后就想起来了。昨天梦见的那个友子,椿的朋友,就是她!
“找那只猫有什么事吗?”
“那只猫是我朋友最珍视的宝贝。我想找回它。”
“最珍视的宝贝?本来不打算出现的福丸,单单对这句话作出了反应,出现在了友子面前。
“福丸!”看到福丸的出现,友子高兴得叫了起来,“找了你很久。太好了,终于找到了!” 看到松了一口气的友子,夏目忍不住替福丸问道:“找了很久吗?”
“嗯,从某一天的雨夜开始,福丸消失的那天开始,就开始找了。真的很久,好久。福丸,回家吧!”
“椿还没有来,我要等她。”福丸说着往后退了两步。可惜友子是无法听懂她所说的话的。
“你是友子小姐吧?椿小姐自己为什么不来呢?”夏目早就在想这个问题了。
“你怎么知道我的名字?哦,福丸告诉你的吧?福丸的事,她全部都告诉我了,在过世之前??”
“过世了?”夏目虽然想到这个结果,但听到还是有些吃惊。
“嗯,所以她才会把福丸托付给我。她告诉我不要再让那个孩子一个人了。”
“椿,死了?”福丸还不能相信这个是事实。
“福丸,虽然椿已经过世了,但她说过她最喜欢福丸和我了。所以她一定会呆在有我,有福丸的地方。我,最喜欢椿了!被学校女生欺负,孤立的时候,只剩下一个人的时候,只有椿一直站在我的身边,她真的很温柔。福丸呢,她对你应该也这样的存在吧?”
过去的记忆涌上了福丸的心头。
“好孩子,回家吧!”
“小猫,你真是我的福神。”
“还好遇到了福丸,我不是一个人了!”
“不行哟!福丸,我是真的有重要的事情要做,所以听话!”
“放心,一定会来接你的!”
全部看清了,椿的温柔,椿的美好,椿的率真,还有椿的坚持。椿温柔的笑脸,离别时强忍住的泪水和没说出口的话,福丸一下子全明白了。其实,怨啊,恨啊什么的都敌不过椿的一句话“我来接你了”。福丸早就在心里呐喊着“我想回去,接我回去”了,它也想回去,回到那个椿所执着的地方。它相信,椿,一定就在那个地方。
“嗯,椿最珍视的孩子,我也想和她一起珍视下去。椿没有擅自离开,她给我和福丸留下了最重要的东西。”
夏目目送二人的离开,朝阳下那一人一猫的身影是那么温柔。
正出神时,身旁响起了妖怪的声音,“夏目大人,请您将名字还给我!”这是每天的必修课,夏目重复着已经熟练的动作,将名字换给了来者。来者毕恭毕敬地向夏目行了一个礼,并向夏目道谢:“夏目大人,谢谢你,这是回礼。”说完并交给夏目一个五彩斑斓的叶子。
“最重要的东西吗?”夏目看了看手中的叶子和逐渐变薄的友人帐,喵咪老师的抱怨声又传入了耳中:“你这个滥好人,又惹了一堆麻烦,不管你了!”夏目笑了笑,握紧了手中的友人帐,向喵咪老师走去。
“玲子奶奶也留下了呢!”
第二篇:夏目友人帐 参 第1话
夏目友人帳 参
第1話
妖しきものの名
夏 目:小さい頃から時々、変な物を見た。
妖怪1:ややややや? やっやっやっやっや!
妖怪2:やれやれ今日も釣れなかった。
妖怪3:腹が減ったなあ。アケビでも取りに行くか。
妖怪4:おい。
妖怪2&3:いっ!! え~~? うぇ~~っ!!
妖怪4:たったいま、この辺で人の子を見なかったか?
妖怪2&3:あっあぁぁぁ…。
妖怪4:友人帳の、夏目玲子の孫がこっちに逃げてきた、はずなのだが?
妖怪2&3:い~~! い~~! わあぁぁぁぁ! い~~!
妖怪4:隠し立てすればお前らも食うぞ。
妖怪2:し、知らぬぞ~~!
妖怪3:本当だ~~!
妖怪4:ちっ。おのれ。どこへ逃げた。あ~、美味そうだったのに。夏目。
妖怪2&3:はぁ~…。いっ!?
夏 目:よっ、はっ…。はぁ。行ったか。
妖怪2&3:あ~! 人の子。
夏 目:他の人には見えないらしいそれは、おそらく、妖怪と呼ばれる物の類。
夏 目:祖母の遺品、友人帳。強い妖力を持っていた祖母レイコは、出会った妖怪に、片っ端から勝
負を挑み、打ち負かすと子分になる証に、その名を書かせた。名を呼べば決して逆らえない契約書の束、友人帳。それを継いで以来、こんなふうに妖怪たちに追われる日々。はあ…。息を整えて入らないと。あ…。あ、茶碗? なんでこんなところに? あ、わあ! あ、あぁ…。はっ! あぁ。おいこら、出て来いっ! 人の家の下に勝手に入るなっ!
塔 子:貴志く~ん?
夏 目:はいっ…ってぇ~! ああ、と、塔子さん。
塔 子:ただいま。買い物遅くなっちゃって。大丈夫?
夏 目:ああ、ええ。
塔 子:どうしたの?
夏 目:そのぉ、ネズミがいたのが見えたんですけど、気のせいでした。
塔 子:まあ~。でも大丈夫よ。うちにはネコちゃんがいるものねえ。
1
夏目友人帳 参
夏 目:あ、はい。
塔 子:まあまあ。こんなに汚れちゃって。
夏 目:あぁ。
塔 子:そうだ。今日はすき焼きよ、貴志くん。
夏 目:あぁ、うれしいです。危なかった。奇妙に見えそうな行動は、取らないようにしなければ。
滋 :もし本当にネズミなら、ネズミ取りを買ってこなくちゃな。
夏 目:あぁ,いいえ。多分見間違いでしたから。
ニャンコ先生:あんあんあん…。
塔 子:近所の子犬が迷い込んだのかもしれないわねえ。貴志くん。おかわりは?
夏 目:あぁ、はい。
塔 子:はい。
夏 目:両親を早くに亡くし、親戚の間をたらい回しにされてきた俺を引きとってくれた、藤原夫妻。こ
こは俺の大切な場所。
塔 子:はいどうぞ。
ニャンコ先生:それは影茶碗というやつだな。もう2週間ぐらい床下に住みついとるぞ~。
夏 目:プ~~っ!! 2週間、住みついてるっ!? 先生! 用心棒だろ~っ!
ニャンコ先生:落ち着けアホ。お~! 当たりだ夏目。もう1本もらって来~い!
夏 目:先生~っ!
ニャンコ先生:名工に焼かれた茶碗は欠けて捨てられた後、大地の力を吸って、妖物になることもあ
るらしい。そして人恋しくて、古い民家の床下に住みつくのさ。
夏 目:人恋しくて…。
ニャンコ先生:その家に災いが訪れるとき、家中を走りまわって知らせたり、気まぐれに身代わりとし
て、災厄を受けてくれることもあるらしいぞお。
夏 目:害は無いのか。
ニャンコ先生:そういうことだ。ま、飽きれば出て行くさ。ほっとけ~。あんっ、あん…。
夏 目:そうなのか。
ニャンコ先生:だいたい用心棒と言っても、私はお前の死後友人帳をもらう約束で、そいつを狙って
来る妖どもから守ってやってるだけ。ああ?
妖怪5:こ~んば~んわ~。
夏目&ニャンコ先生:うわっ!
妖怪5:夏目様ですよね~? 名を返していただきに参りました~。
夏 目:友人帳を受け継いだ俺は…。
ニャンコ先生:ぬぐぐぐ~! ぬぐ…。
2
夏目友人帳 参
夏 目:祖母に代わって、妖怪たちに名前を返すことにした。まず、相手の姿をイメージし、念じる。
「我を守りし者よ、その名を示せ」。名前を解放するのに必要なのは、レイコと同じ血を持つ者の、唾液と息。ふうっ。
妖怪5:ありがとうございます。
夏 目:んっ、あぁ。名前を返すと、ひどく疲れる。
ニャンコ先生:バカモノ~! また友人帳が薄くなるではないか、コラ~! 何考えてんだお前は~!
わかってんのか、コラ~!
夏 目:勝手にやって来て、勝手に去っていく。そういう物に心を振り回されないように、いつかは、
強くなれるだろうか?
夏 目:何の音だ? まるで、足音…。あっ!
ニャンコ先生:なんだっ!? その家に災が訪れるとき、家中を走りまわって知らせたり…。 夏 目:あっ! 早速走りまわってる! あっ、危ないっ! あぁ。おっ、うわっ!
ニャンコ先生:んん?
夏 目:先生~~!!
ニャンコ先生:あ~~、もぅ、私のせいではないだろうが~。
夏 目:つまり近々、あの家に災厄が訪れるということか…。はぁ…。
西 村:どうした夏目? とうとう恋わずらいかぁ?
夏 目:いやぁ、そんなんじゃ無いよ。ちょっと寝不足なんだ。
西 村:は~、ま~たエッチな本でも見てたな~?
夏 目:ふっ、違うよ。
笹 田:何々? 夏目くんがどうしたって?
西 村:女子には関係ない話。
笹 田:何よ~、ケチね~。教えてくれたっていいじゃない。
西 村:おっ、お~~っ!! あ痛っ!
笹 田:ちょっと~、大丈夫?
夏 目:この待ちに来て、友人もできた。祖母には…。
西 村:じゃあなっ!
北 本:また明日な~!
夏 目:レイコさんには、人間の友人はほとんどいなかったらしい。だからなのか、彼女は片っ端から、
妖怪たちに喧嘩を吹っかけていたのだ。
オババ:あ痛たたたた…。えっとぉ、杖が、杖…。
夏 目:大丈夫ですかぁ? 杖ならここに。立てますか?
オババ:おやおや、ご親切に。坊やにはアタシが見えるんだねえ?
3
夏目友人帳 参
夏 目:えっ? しまった! 妖怪かぁ!? あ!
オババ:イッヒッヒッヒ…。おぉ坊や、なんと強い力を持ってるんだぁ!
夏 目:はっ、離せっ!
オババ:調度良かった。アタシは目が悪くてねぇ。坊や、このオババの手伝いをしとくれよ。昔、この
辺りで、とても強い力を持った妖に鏡を借りてねえ、名も知らぬがそいつは大きな災いを呼ぶと、他の妖どもに恐れられていた。しかし坊やほどの実力があれば、きっと見つけられるはず。
夏 目:なっ…! 離せ! 無理だ! 悪いが手伝えない。あっ…、くっ!
オババ:おや、ダメだねえ。妖物が見えるのにわからないのかい? 断ったらどうなるか?
夏 目:とにかく面倒はごめんだ。そんな災いを招く妖怪に関わったりしたら、藤原家に、もし何か持
ち込んでしまったら…。
オババ:かわいそうだが気に入ってしまった。手伝ってくれぬというなら、祟る。
夏 目:はっ、ヤメろ~っ! ぐっ! はっ、はっ、はっ…。
オババ:明日もここで待っているよ。来なかったら、殺すっ!
夏 目:ニャンコ先生~っ! はぁ、はぁ、はぁ…。
ニャンコ先生:にゃあ? どうした夏目?
夏 目:はぁ、ヤバい。なんか変なヤツに…。
ニャンコ先生:あ~、お前、祟りを受けかけておるなあ? 私の獲物に手を出すとはどこのどいつだ
~っ!
夏 目:おっ…。
ニャンコ先生:お?
夏 目:オババ。
ニャンコ先生:ん? オババ? なんか怖いぞぉ?
夏 目:あぁ…。
ニャンコ先生:あっ、おいっ! しっかりしろ! 夏目っ! おいっ! 夏目っ! しっかりしろ! 起き
ろコラっ! ほらっ! おいっ!
夏 目:なんだろう? そういえばさっき、オババの言った何かが、少し引っかかった。影茶碗が走っ
てる。俺が災いを持ち込んだから…。
オババ:今年も咲かないのかい? このまま枯れてしまったら、楽しみが減って、寂しいじゃないか。
よし、このオババがきっと助けてやるから、待っといで。
夏 目:夢? ん…、それとも、あのオババ妖の? あ…!
ニャンコ先生:んん?
オババ:来ちゃった。
夏 目:え~~っ! なっ、なんで!?
4
夏目友人帳 参
ニャンコ先生:ん~~っ! くぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…!!!
夏 目:明日待ってるって言ったじゃないかあ!?
ニャンコ先生:くぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…!!! くぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…!!!
オババ:うっふっふっふ。待ちきれなくて。せっかくヤツを見つけてくれそうな者に会えたんだ。逃げら
れたらもったいない。このオババ、結構気が短いよ~。手伝うのかい? 手伝わないのかい?
ニャンコ先生:くぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…!!! くぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…!!!
夏 目:わかった。手伝うから。この家に入らないでくれっ!
オババ:うっふっふっふっふ…。
夏 目:あぁ…。
夏 目:あのオババ、先生も追い払えないような、力の強いヤツなのか?
ニャンコ先生:あれは多分社持ちだった神格の妖。私はともかく、小物は触れれば祟りをもらいかね
ない。
夏 目:そんなに強いのかぁ。
ニャンコ先生:へっ! 忌々しい。しかしこの時代、あの手の神は大抵気を病んだり弱ったりしている
ものさ。あいつは目がぼんやりとしか見えていないようだし、適当に付き合って終わらせろ。 夏 目:小物は気安く近づけない。だから、妖怪が見える人間の俺に飛びついてきたのか…。妖とも
人とtも付き合えない神様。レイコさん…。
オババ:おっ、この匂い! こっちだ坊や。よく来たね。
夏 目:拒否権は無いんでしょう? あ、花…?
オババ:んっへっへ。良い香りだろう? 見せびらかすために付けてきたのだ。
夏 目:確かに、良い香りですね。
オババ:ほう、そうかい? そうだろそうだろ。さあこっちだ。おいで坊や。この先の森で、ヤツと出会っ
たのだ。
夏 目:坊やはヤメてください。そうか。妖怪との交流も少ないなら、「友人帳の夏目」なんて知らない
か。これは、道がわからなくなりそうだ。
オババ:こっちだよ、こっち。ほら、この辺りでヤツにあったんだ。
夏 目:そのぉ、災いを呼ぶと恐れられている妖怪って、どんなヤツです?
オババ:うん。まあはっきり見えていたわけではないが、結構小さいヤツだったよ。
夏 目:小さい? 死ぬ気でかかれば、俺と先生でなんとかできるか…。あれ? オババは鏡を借り
たと言ってなかったか? そんなに危険なヤツなのに? そうか。あの時引っかかったのはこれか…。
オババ:うっふ。私は話し相手も少ないからね。住処の近くにある花の老木を可愛がっていたんだけ
ど、厄介な悪霊が付いちまったんだ。
5
夏目友人帳 参
夏 目:老木…。あの夢はそれか。
オババ:お陰で、その木が枯れてきてそいつを追い払うには鏡が必要でね、探し歩いていたら鏡を持
ってるヤツがそこに座っていたんだ。それを奪おうと思ったが、返り討ちにあい、投げ飛ばされたのだ。
ニャンコ先生:かなりダメダメな神だな。
オババ:それでもどうしても鏡が欲しいと頼んだら、くれたのだ。
夏 目:お? 恐れられていたのに? 結構良いヤツじゃないですか。
オババ:そうなのだよ。しかし他の妖たちはいつもヤツを遠巻きにして恐れているようだったし、ヤツ
自信も言っていたのだ。「自分は災厄を招いてしまう」と。「人間のことが、あまり好きではない」とも。
夏 目:あぁ…!
オババ:鏡をもらったが、私は上手く祓えなくてね。やっぱり返そうと会いに行ったら、鏡を見るのは
嫌いだからと受け取ってくれなくって、その代わりに、時々会って話すようになったのだが…。ああ…、こうやってよ~く見ると、この辺りに傷があった。妖どもをあんなに恐れさせるのに、人に作られた傷のようだった。なんだか可愛く思えて住処へ招いたら、私の社を見て…。 夏 目:あぁ…!
オババ:何故か、少しがっかりしていたよ。その後、事情を話したら、ヤツが老木の悪霊を祓ってくれ
たのだ。ほら、この花がその木の花だよ。それにしても何故だろう? お前の匂いはヤツの匂いによく似ている。あ、よく見れば、その面差しも。
夏 目:その鏡、俺にもよく見せてください。微かにさっきから感じる、友人帳の熱。オババ。オババが
探しているのは…。
妖怪4:やっと見つけたあ! 友人帳の夏目っ!
夏 目:あっ!
妖怪4:今度は逃がさん。いただくぞ~!
夏 目:ぐあっ…!
妖怪4:ぐうぅぅぅ!!
夏 目:この前のっ!
妖怪4:んぬぅぅっ!!
夏 目:左肩がっ!!
ニャンコ先生:んっ! にゃんっ、こらっ!
妖怪4:ぐあぁぁぁっ!
夏 目:先生っ!
妖怪4:うぅぅ、うっ!
斑 :失せろっ!
妖怪4:うぅぅぅ、うあぁっ! あぁ~っ…!!
6
夏目友人帳 参
夏 目:うあっ!
斑 :ちっ! 夏目っ!
ニャンコ先生:しっかりしろ、軟弱者めっ!
オババ:坊や…。
夏 目:あっ…、あぁ! あぁ…。
オババ:おや良かった。肩大丈夫だね。食われたかと思ったが…。
夏 目:はい。折れてもいないみたいです。
オババ:てっきりそのお饅頭は、坊やの用心棒かと思ったら、役に立たないね。
ニャンコ先生:んにゃに~っ! 追っ払ってやったろうがっ! だいたいこいつが不注意すぎるのだ
っ!
夏 目:そうだな。もっと慎重にならないと。もう昔とは違うのだから。俺には…。
ニャンコ先生:基本的にこいつの肩や腕の1本2本どうだっていいんだ。友人帳さえ無事なら。おい
夏目。友人帳は無事だろうな?
夏 目:ああ。オババ。
オババ:ん?
夏 目:友人帳に、名前がありますね?
オババ:友人帳? ああ、そう言えば、何かに名を書いたことがあったなあ。それ以来、何故かヤツ
はここに来なくなってしまったなあ…。
夏 目:オババ。探してもいないはずだ。それは多分人の子で、夏目レイコという、俺の祖母だった人
なんです。
オババ:あぁ?
夏 目:我を守りし者よ、その名を示せ。名を返そう。受けてくれ。アオクチナシ。
オババ:ああ、忌々しい。あの木の花を愛でるのだけが楽しみだというのに…。鏡、鏡さえあれば…。
おっ…? 鏡っ!
妖怪6:おい、あれ、あそこに座っている。
妖怪7:おぉ、あいつは災いのもと。
妖怪6:鬼神より恐ろしいと聞くぞ。
妖怪7:近づかねえよう迂回しよう。
妖怪6:そうしようそうしよう。
妖怪7:恐ろしい…。
オババ:なんと! あの、人の子のような匂いの者が…! ええぇい、しかし頂くぞっ! やあ~っ! レイコ:あっ?
オババ:あ痛たたたた…。不覚、抜かったわぁ…。えっとぉ、え、杖ぇ、杖ぇ…。おぉ?
レイコ:大丈夫ですかぁ? 杖ならここに。立てますか?
オババ:はっ、私にお前さんの鏡をくれないかい?
7
夏目友人帳 参
レイコ:えっ?
オババ:私が可愛がっている唯一の友に、鏡が必要なんだ。
レイコ:鏡なら、その先のお店に…。
オババ:少しのあいだ貸してくれるだけでもいい!
レイコ:あぁ…。はぁ。どうぞ。
オババ:ホントかい? でも…。
レイコ:良いんです。見たって付ける薬も無いし。
オババ:えぇ? なんだい、怪我をしてるのかい? どれどれ、よく見せてごらん?
レイコ:うふっ。くすぐったい。変な人。
オババ:あぁ。今日もいた。良かった。鏡を返すよ。
レイコ:私はもういらないから、あげます。
オババ:あぁ、でも…。
レイコ:鏡を見るのは、嫌いだから。
オババ:お前さん、最近よくここに来るね。
レイコ:私はホントは、もっと遠くへ行ってみたいの。ずっとずっと遠く。誰も知らない所。
オババ:ああ…。お前さん、私の家に遊びに来ないかい?
レイコ:えっ? 行ってもいいの?
オババ:あぁ。いまは枯れかかっているが、綺麗な花の咲く木があるんだよ。見においで。
オババ:ここだよ。
レイコ:社…。
オババ:そしてほら、あの木が…。
レイコ:そうか、そうよね。変だと思った。私に構うなんて。おばあさん、妖なのね…。
オババ:んん? そうだお前さん。名前は何と言うんだい?
レイコ:知りたい? だったらねえ、私と勝負しない? あなたが勝ったら、何でも言うことを聞くわ。な
んだったら、食べても良いのよ。けれど私が勝ったら、あなたの名前を…。
オババ:ああ、思い出した。勝負に負けた私は、神に名前を書いた。そしてあいつは、結局名乗って
くれなかったのだ。そうか、レイコと言うのかぁ、あの子の名は。夏目レイコ…。では、もうレイコはこの世におらぬのか。
夏 目:はい。鏡は、持っていてやってください。じゃあ、帰ります。
オババ:んん。世話になったね。レイコの孫よ。その道を下って行くと、人里に出るよ。
夏 目:はい。
8
夏目友人帳 参
オババ:ふっふっふ。その道を真っ直ぐだぞ。さらば。
夏 目:オババがレイコさんを、妖と間違えたように、レイコさんもオババを人だと。人の友人ができた
と思ったときの彼女は、どんなにうれしかっただろう。
レイコ:変だと思った…。
夏 目:レイコさんはこのことで、妖を嫌いになったりはしなかっただろうか?
ニャンコ先生:おい夏目。見ろ。
夏 目:え? この花、オババの…。
ニャンコ先生:ああ。レイコに悪霊を祓ってもらったと言っていたな。人のくせに無茶苦茶な女だ。 夏 目:あぁ。そうだな。この木をレイコさんが祓ってやったのは、確か、オババが妖だと知った後。
夏 目:ただいま~! あれっ? 塔子さん、どうしました?
塔 子:あぁ。貴志くん、見てぇ。知らないお茶碗が落ちていて。ほら、誰のかしらぁ?
夏 目:ええ? あっ!
ニャンコ先生:気まぐれに身代わりとして、災厄を受けてくれることもあるらしいぞぉ。
夏 目:俺のです。俺のなんです。とても大事な。
塔 子:あぁ…。
夏 目:勝手にやって来て、勝手に去っていく物たち。でも、一度でも触れ合ってしまったら、それは
誰に気付かれなくても、心を支え続ける、大事な出会いなんだ。
〈了〉
夏 目:浮春の郷?
ニャンコ先生:この世のものではない幻の里だ。
夏 目:ならあの二人はどうやってここへ?
ニャンコ先生:祭囃子と、イカ焼きの匂いに釣られたんじゃないか?
カナワ:帰りたい。叶うことなら、共に。
/
9